なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part10



Part10



「うっ……くっ……」
 目が覚める。全身が痛い。……苦しいのは、うつ伏せになっているせいか。
「うぅ……」
 真っ暗闇の中、視線を巡らせる。……どこだ、ここ。

 ……ああ、そうか、落ちたんだ。
 気を失っていたんだな、私。

「いっ!」
 身体を起こそうとした瞬間、右膝の辺りからとんでもない激痛が走り、ぶわっと全身に汗が滲んだ。
「ああっ!」
 ちょっと動かそうとしただけで、あまりの痛みに顔が歪む。
「うぅ……」
 間違いない。完全に折れてる。

 そう確信した瞬間、身体が恐怖に覆われていくのを感じた。呼吸が激しくなり、身体の震えが止まらない。
 何も見えない闇の中、視線があちこちへ動く。

「け、剣、剣は……」
 そこで、右手に持っていたはずの剣を失っていることに気付いた。
 武器が無いと、戦えない。いや、武器があったとしても、こんな足じゃ立つことはおろか、まともに動くことさえできないじゃないか。
 この状況で、魔物が出てきたら……。

「……やだ」
 目に、涙が滲んでいくのを感じる。
「死にたくない。こんなとこで、いやだ、死にたくない……」
 掠れた呟きと荒れた呼吸音だけが、暗闇に不気味に響く。
「だ、誰か、誰かたす、助け……」
 制御不能の震えのせいで、言葉もまともに出せない。

 じゃり。

「――ひぃっ!」
 突然耳に届いた音に、身体が跳ねた。ばたばたと手を動かし、ようやく肩に下げていたバッグを失っていないことに気付く。

 じゃっ。ざりっ。

「う……うわ……」
 震える手をバッグに突っ込み、入れておいたナイフを取り出す。けど、鞘から抜こうにも、手が震えてうまくいかない。
 それでもどうにか抜き放ったナイフを、腕で少し身体を起こしただけの状態で、前に構える。

挿絵10-01

 ……音は、まだ続いている。それどころか、こっちへ近付いてきている気がする。

 気が狂いそうだ……!

「ビアンカ? 大丈夫?」
「――! ローザっ?」
 確かに、ローザの声が聞こえた。じゃあ、近付いてきているのは、ローザなの?
「良かった。生きてて」
 その声と同時に、ぼやっと弱い明かりが現れる。
「うううっ……!」
 その向こうにあるローザの顔を見た途端、涙が溢れ出た。思い切り抱きつきたい衝動に駆られたけど、足が痛くて動けない。
 そのせいで、さらに涙が流れ出る。

「ちょっと、落ち着きなさいよ」
 疲れた声のローザが、私のそばで膝をつく。
「ちょっ、ちょっと!」
 私はすぐに彼女の腕を掴み、思い切り引き寄せた。
「やめっ……」
「うああああぁぁぁぁ……!」
 体勢を崩したローザの腕に、思い切り抱きつく。

挿絵10-02

 ローザの体温を感じ、一気に恐怖感が和らいでいく。

「――いっ、たぁ……!」
 安心する私に思い出させるように、右足が激痛を訴え始めた。
「え?」
 ローザは私の腕を振り解き、光を少しだけ強める。その目が私の右足を確認し、見開かれた。
「あんた、それ、折れてるんじゃない?」
「たぶん……」
 そう言ってから見てみると、膝の辺りが妙な色になって腫れ上がっていた。

 ローザは上を見上げてから、視線を私の右足へ戻す。
「これだけの高さから落ちてこの程度で済むなんて、運が良いね」
 言いながら、ローザは私の右足、変色している箇所へ杖を向ける。
 杖の石が淡く光ったかと思ったら、その光は私の足へと伸び、折れている部分を包み込んだ。
 一体、何を始めたのだろうか。

「……え?」
 すぐに、違和感を覚える。足の痛みが、少しずつ和らいでいく気がしたから。
「じっとしていて。骨をくっつけてるから」
「えっ?」
 骨をくっつける? 何を言ってるんだ?
 ……でも、確実に痛みが減ってきている。魔法は、こんなこともできるのか。
 信じられない思いでいるうちに、足を覆っていた光が消えた。

「どう? 痛みは完全に消えてないだろうけど、立って歩くくらいはできるんじゃない?」
 立ち上がるローザの目を見つめ、半信半疑で身体を起こしてみる。
 ……確かに、痛みはまだだいぶあるけど、身動きできないくらいのあの激痛には遠く及ばない。
「すごい……」
 二本の足で、しっかりと立つことができた。これくらいの痛みなら、十分我慢できそうだ。
 手の甲で涙を拭き、鼻をすする。
「……ありがとう、ローザ」
 この子がいなければ、確実に私はここで死んでいただろう。そう思うと、もう一度抱きつきたくなる。
 とにかく、感謝の気持ちを表したかった。
「まったく。手伝ってくれるどころか、逆に足手まといになってるじゃない。貴重な魔力を使わせないでよね」
 そう言いつつ、淡い光をいくつか出して、周囲へ展開させるローザ。
「……ごめん」
 確かに、彼女の言う通りだ。今のところ、私はただの役立たずでしかない。

 そこで、あることを思い出す。
「魔物は? あの後どうしたの?」
 ローザがここにいるということは、どうにか対処したってことだろうけど……。
「まあ、私もあんたの叫び声で目を覚まさなかったら、今頃魔物に食われてただろうからね。一応、ちょっとは役に立ったってことにしておいてあげる」
 叫び声? ……ああ、穴に落ちた時、そういえば叫んだ気がする。

 上を見上げれば、ぽっかりと空いた穴の向こうがうっすらと光っている。あそこから落ちたのか。
 確かに、足だけで済んだのは運が良かった。
「あそこからここまで、道が繋がってたの?」
「あんたが落ちた穴の近くに、横に伸びる道があったんだよ。それがここに繋がってたの」
「へぇ……。でも、私がここにいるってよくわかったね。さっきまで、明かりを消してたでしょ?」
 すると、ローザは私の方を向いて口元にわずかな笑みを浮かべた。なんだ?
「あんたが着てる服とか荷物とかに、ちょっと魔力を帯びさせて細工しておいたからね。そのわずかな魔力を辿って来たんだよ」
「な……」
 私を牢屋に入れてる間にやったのか。
「こうなることを想定してたわけじゃないけど、やっておいてよかった」
 じゃあ、本当はどういうつもりで細工したのか。
 ……まあ、なんとなく予想できるけど。

 溜め息一つ、まだ少し赤い右膝を見下ろして、ふと思う。
「……ねぇ。骨折を治せるんならさ、自分の手の怪我なんて簡単に治せるんじゃないの?」
 ローザの右手の怪我がどの程度のものなのか知らないけど、私の膝ほどは酷くないはず。
「この魔法は、魔力を送り込んで肉体の修復力を瞬間的に向上させるものなんだけど、自分の怪我には使えないの」
 答えるローザは、自身の右手を見ている。
「なんで?」
「自分の身体に自分の魔力を送り込んでも、それはただの循環でしかないから。ほかの魔法使いにやってもらうなら話は別だけど」
「ふぅん……」
 わかったような、わからないような……。
 とにかく、自分で自分の怪我は治せないってことか。不便だなぁ。


 展開された魔法の光は、どれも最低限といった光量だけど、ここがそれなりに広い空間であることを確認することはできた。
 今まで通ってきた通路とは、明らかに異なる雰囲気がある。

「ん? あれ?」
 辺りを見渡して、気付いた。
「どうしたの?」
「あそこ、なんか無い? 光を一個、あっちに動かしてみて」
 私が指差す壁に、ひときわ闇が深い箇所がある。ローザが光を動かすと、それがなんなのか明らかになる。

 奥へと続く道。その入口となる穴があった。



■以下、作者コメント■

気絶するほどの衝撃を受ける高さから落下したら、膝の骨折程度では済まないのでは?
自分で書いた文章ですが、読み直していたらそこにどうしても突っ込みたくなりました。
……でも、まあ、「運が良かった」の一言で済ませてもいいかな、とも思いました。

さて、今作品も残すところ3パートとなりました。
そろそろ次のことを考えないといけないんですけど、正直、まだ案がまとまってません。
う〜ん、どうしよう……。

■ 2016/03/05 更新

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