なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part13



Part13



 木箱に入っていたのは、一本の古びた杖だった。

「これ……」
 ローザの表情を見るに、この杖のことを知っているようだ。
「先生が使ってた、杖……。無いと思ったら、こんなところに」

 先端に、角張った緑色の石が付いた杖。
 ローザが使っている物より柄が長く、その色からして、相当長い間使われていたであろうことが見て取れる。

 ローザはそれを、そっと抱き締めた。

 彼女から箱の中へ視線を戻した私は、ある物を見つける。
「ん、紙が入ってるよ」
「え?」
 言われて気付いたローザは、二つ折りになっている紙を手に取り、開いた。

 ……それは手紙だった。ローザ宛ての。


 ――私の大切な家族であるローザへ。

 あなたがこれを読んでいるということは、無事にここまで辿り着けたということですね。
 誰かに、協力して貰って。

 あなたは、外の世界を恐れていました。私は、それが心配でならなかった。
 このままだとあなたは、私の死後、ひとりぼっちになってしまう。
 だから私は、誰かと協力しなければならない仕掛けを残し、あなたにこの洞窟へ入るよう言い残したのです。

 少し強引な手段かなとも思いましたが、こうでもしないとあなたは、ずっと外の世界との関わりを拒み続けてしまう。それでは駄目なのです。
 私が甘やかしたせいでもありますが、結局は、あなた自身が外の世界と関わりたいという意思を持たなければ、変わることはできないのです。

 でも、きっとあなたなら大丈夫だと信じていました。
 よく頑張りましたね。

 一緒に入っている杖は、私からあなたへの最後のプレゼントです。大切に使って下さい。

 そして、あなたに協力してくれた方との関係を、大切にしなさい。
 きっとその方は、あなたにとってかけがえのない存在になることでしょう。

 最後に、あなたが外の世界へ羽ばたいていけることを願って。

 行ってらっしゃい、ローザ――


「うぅ、……先生。……せんせぇ。ううぅぅ……」
 杖を抱き、身体を折り曲げて泣くローザの肩に、そっと触れる。なんか、貰い泣きしちゃいそうだ。

挿絵13-01

 ……この子の師匠は、本当に優しい人だったんだな。

 その後しばらく、ローザは泣き続けた。


 前方に見えてきていた光は、じょじょに明るく、大きく広がっていき……。
「はああああ……。やっと出られた……」
 洞窟の中よりはずっと明るい森の中へと、私たちは足を踏み出した。
 まだ危険な場所にいることには変わりないけど、安堵感が半端ない。脱力して、その場に倒れ込みそうだった。


 帰り道は、わずかながらであっても明かりが配置されていたため、魔物とは一度も遭遇せずに済んだ。
 あの部屋からここまでの長い道のりを、ローザの身体を支えつつ、互いに励まし合って歩いてきた。
 ホント、死ぬほど疲れたよ。初めてじゃないかな、これだけ心身共に疲れ果てたのは。

 脱出した今なら、まあ、貴重な経験をしたなと思えなくもない。


「もう少し、明るいところまで行こう」
 力無く、体重のほとんどを私に預けているローザの身体を支えながら歩き始めた時、視界の端で、魔法の玉が消えるのを見た。
 振り返ると、もうそこに明かりは無く、洞窟の入り口は森の闇に半分ほど飲み込まれていた。
「ローザ? ちょっと!」
 そして気付く。ローザの目が閉じていることに。
 サーッと血の気が引いていくのを感じた。まさか……。

「……ん?」
 呼吸音。
「ちょっとぉ、……脅かさないでよ」
 ローザは、眠っていた。
 洞窟から無事に出られたことで、張り詰めていた緊張の糸が切れたのだろう。
「はああぁぁぁぁ……」
 私は大きく息を吐きながら、その場にへたり込みそうになりながらも、グッと両足に力を込めた。


 ローザが目を覚ましたのは、翌日の朝を迎えてからだった。

「……ビアンカ」
 ベッドの横に座る私を見て、酷い顔のローザは呟いた。
「ここ、私の家?」
「そうだよ。あそこからここまで、眠ったあんたを運んでやったんだから、感謝しなさいよね」
「私、寝ちゃってたんだ」
 ぼんやりとした顔で呟いてから、ハッと何かを思い出したような顔をするローザ。
「杖は?」
「そこに立てかけておいたよ」
 私が指差す先を見て、彼女はホッとした表情になった。
 それを見てから、私は立ち上がる。
「行っちゃうの?」
 すぐさま、ローザが声をかけてきた。寂しそうな目をしている。
「心配しなくても、また来てあげるよ」
 とりあえず街に帰って、私のことを心配してるであろうあの人に顔を見せてあげなきゃね。
「本当に?」
「ホントだって」
 ゆっくりと身体を起こすローザに、私は笑う。
 たぶん、苦笑いになっていたと思うけど。


「ねぇ、ビアンカ」
 帰り支度を始めた私に、ローザが静かに声をかけてきた。
「なぁに?」
「あ、あのさ、……あの……」
 もじもじして、言いにくそうにしている。
「言いたいことがあるなら、遠慮しないで言いなよ」
 促してやると、彼女は私を上目遣いに見ながら、どうにかこうにかって感じで口を開いた。
「……私と、その、……友達に、なってくれる?」
 言ってすぐに、ローザは恥ずかしそうに顔を背ける。その様子がおかしくて、思わず噴き出す私。
「そんなことわざわざ言わなくても、もう友達でしょ、私たち」
「え……?」
 まんまるになった目が、私に向けられる。
「牢屋に閉じ込めたりしたのに?」
 ……結構、気にしてたんだな。
「そのことはさ、もう謝ってくれたでしょ? だから、私はもう気にしてない。だから、あんたももう気にしないでよ。やり方はどうあれ、事情があったわけだし」
 まあ、こっちはその事情に巻き込まれた、ただの被害者なわけだけど。
「……でも、そう言ってくれるなら、私も改めて言っておこうかな」
 そして、ローザへ手を差し出す。
「私と友達になって。ローザ」
 ニッと笑って見せると、ローザの表情がみるみる明るくなっていく。
 そして、「うん!」と大きく頷き、ガシッと私の手を両手で覆う。
 子供みたいで、なんだか可愛らしかった。

挿絵13-02


 また一日半ほどかけて森から出た私は、足を止め、一面に広がる草原を眺める。
 おもむろに触れる首には、もうあの首輪は無い。

「あー……」
 ふと思う。今回、トレジャーハンター的には成果ゼロだったな、と。
 結局、金や宝石はもちろん、お宝一つ手に入らなかった。

 あの森に人は暮らしていたけど、それは魔女ではなかった。
 やっぱり、噂話レベルの情報なんて買うもんじゃない。

 ……でも、あの森へ行ったことを後悔はしていない。お宝は無かったけど、得た物はある。

 正直、結構嬉しかったりする。友達になって、と言われたこと。
 こんな仕事をしてると、同年代の友達なんて滅多にできないからね。

 小さな雲が浮かぶ青空を見上げ、あの子の顔を思い浮かべる。
 ……さてと。早いとこ会いに行ってあげないとね。



おしまい。



■以下、作者コメント■

今作品も、どうにか予定通りに終わらせることができました。
小説も挿絵もまだまだだなって感じですが、やりたかったことはできたので、満足感はありますね。
ちょっと中途半端なところはありますが、一応、これで完結です。
ここまで読んで下さった方、ありがとうございました。

さて、これからのことですが、次回の更新で1ページにまとめてお知らせします。
ここに書くと、長くなってしまいそうなので。

で、その次回更新ですが、ホームページ開設四周年となる4月8日を予定しています。
それでは。

■ 2016/03/26 更新

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