なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part04



Part04



 どこまで行っても続いているんじゃないかと思わせるくらいに広大な森。しかも、人の手が加わっていないとなれば、トレジャーハンターのような仕事でもしていない限り、好きこのんでこんなところに入ったりはしないだろう。迂回路が無いわけでもないし。

 でも、この森に人が寄り付かない理由は、それだけじゃない。
 この森は暗すぎて、魔物が湧きやすい。


 高台から見た、森が途切れている一画。そこへ向かっている私は、走っていた。

「あ〜っ、次から次へとぉ!」
 振り返らずとも、そいつらの数が増えていっていることはわかる。
 人間を見れば見境なく襲いかかる本能を持つ、魔物たちの数が。

 大きな口だけがある楕円の胴体の左右から太い腕を生やした魔物、ハングリーホール。
 その太い腕を器用に使って、走って追いかけてきている。
 奴らの腕力は凄まじいと聞いたことがある。ちょっとでも身体のどこかを掴まれたら終わりだ。抵抗する間も無く、奴らの胃に収まることになるだろう。
 一体だけなら、戦って勝つこともできたかもしれない。でも、二体以上は無理。昨日出てきたイエローアイとは、脅威の度合いが比べ物にならない。

 必死だ。これだけ死に物狂いで走るのは、いつ振りだろう。いや、そんなこと考えてる場合じゃない。
 とにかく走れ!

 ハングリーホールには目が付いてないから、どこかに隠れてしまえばやり過ごせるはず。じゃあどうして追いかけられているのかと言えば、奴らに足音を聞かれちゃったからだ。
 口と同じ高さの身体の側面に耳があるらしいことは知ってるんだけど、警戒が不十分で、奴らがそばにいることに気付かなかった。
 これだけ薄暗ければ、どこに何が潜んでいるのかわからないとはいえ、ちょっとの気の緩みが命の危機につながる。

 奴らに見つかる前の私に、「バカヤロー!」と叫んでやりたい。


 すぐにでも物陰に飛び込みたいんだけど、奴らとの差が広がらない。走りにくそうな身体の割りに、身のこなしはなかなか良くて、森の中をすいすい進んでくる。
 いや、森の中だからこそのあのスピードか。
 奴ら、太い腕で枝を掴んで、飛ぶように移動してる。足場の悪い地面を走るしかない私には、かなり不利な状況だ。

 どうする? ……ん、待てよ?
 奴らは、音を頼りに私を追いかけている。だったら……。

 意を決し、私は走るのをやめ、その場で静止した。
 恐怖のあまり、身体がうまく動かなくなったわけじゃない。

 ……そうだよ。どうして私は、馬鹿みたいに走ってたんだ。
 止まって足音を無くせば、奴らが私を追いかける術は無くなるじゃないか。

 いつの間にか十体以上の群れになっていたハングリーホールたちは、突然無くなった音に困惑するように移動をやめた。そして、耳を澄ますように、身体を前後左右に向けている。

 ……冷静になって考えてみれば、簡単なことだ。こいつらに犬のように利く鼻があれば話は別だけど、耳だけに頼っているならこうすればいいだけだった。
 あとは、こいつらの耳がどれだけいいかだ。呼吸音すらも聞き取れるなら、私の命は無い。

 ……大丈夫のようだ。どいつもじりじりと移動しているものの、真っ直ぐ私の方へ来る奴はいない。
 このまま、じっとやり過ごそう。


 喉すらも鳴らせない緊迫した状況。私はその場で一切動かずに、周囲をゆっくりと移動していくハングリーホールたちの姿を凝視する。
 奴らが枯れ葉や枝を踏みしめる音だけが、この場を支配している。

挿絵4-01

「!」
 ここで、最大のピンチ到来。すぐ後ろまで来ているハングリーホールの腕が、そのまま進めば私の足に当たってしまう。
 さすがに、樹木とは明らかに異なる物に当たれば怪しむだろう。確認のために噛み付いたりしてくるかもしれない。そうなれば、終わりだ。

 どうする、どうするどうするどうするどうす――

「――!」
 今まさに、その腕が私の足に触れようとした瞬間、どこかで爆発音のようなものが轟いた。
 次の瞬間、ハングリーホールたちはキィーと甲高い声を一斉に張り上げ、音がした方へ駆け出す。

 なになに? 何が起きたの? なんだよ、今の音。

 ハングリーホールたちは森の奥へすっかり姿を消し、とりあえずの危機は去った。だけど私は、素直には安堵できずにいる。
 今の音は別の魔物の仕業かもしれない、という新たな不安が、脳裏をよぎったからだ。


 できるだけ明るい場所、そしてできるだけ速度を抑え足音を抑えて歩き続けた先に、ようやく目的地が姿を現した。
 ぱぁっと視界が晴れ、遮る物の無い空が広がる。

 ……ここだ。あの高台から見た場所。やっぱり、ここだけ樹木が一本も無い。

挿絵4-02

 見渡せば、結構広い空間だ。あるのは、一面緑の草原のみ。蝶などの虫が飛び交うだけの、長閑な光景。殺伐としていただけだった森の中とはまるで異なる雰囲気に、私は少しの間、その場に立ち尽くしていた。

 近くで聞こえた小鳥の声に、我に返る。
 そうだ。ぼーっとしてる場合じゃない。ここを調べに来たんだった。

 目的を思い出し、一歩を踏み出そうとしたその時――
「誰?」
「――!」
 突然の声。動物でも魔物でもない、確かな人間の……女性の声。
 あまりの驚きで心臓が飛び出そうになりながらも、声がした方へ振り向く。

 その姿は、すぐ近くにあった。



■以下、作者コメント■

モンスターのデザインって、簡単なようで難しいですね。
私の場合、あまり発想が豊かではないためか、とてもシンプルな物になってしまいます。
まあ、もし凝ったデザインを思いついたとしても、それを表現できるかは微妙なところですが。

パート3で出そうと思っていた新キャラは、次回登場します。
魔物関係のシーンは、もう少しサラッと進めた方が良かったかもしれませんね。
そうしたら、少なくとも新キャラの姿くらいは今パートで出せていたと思うので。
構成力がねぇ。まだまだですねぇ。

■ 2016/01/23 更新

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