なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part06



Part06



「あっ、それ!」
 女の子の手には、私の上着があった。
「返してよ!」
「はい」
「えっ?」
 格子の間から伸ばした私の手に、それはあっさりと乗せられた。これは予想外。

「もう調べ終わったし、さすがに、そんな格好じゃ寒いと思ってね」
 口調はさっきまでよりは幾分優しいけど、相変わらず私を見る目は冷ややかだ。
「まあ、そんなペラペラな服じゃ、あっても無くてもそう変わらないだろうけど」
 悪かったな。動きやすさ重視なんだよ。
 手を引っ込め、ささっと上着を着る。

「後で、毛布を持ってきてあげる。それと、食事もね。死なれちゃ困るし」
 そう言って、また歩き去ってしまいそうな彼女の背に、私は「待って」と静かに声をかける。
 すると、彼女の足が止まった。そして、こちらを振り返らずに、「何?」と一声。

「一つだけ聞かせて。あなたってもしかして、……魔女、なの?」
 恐る恐るだ。もし魔女なら、それは本当の恐怖へと変わるだろう。

 しかし、返ってきたのは「違うよ」という答えだった。女の子はこちらを振り返る。
「私は魔女じゃない。ただの、魔法使いだよ」
 そう言い残して、彼女は足早に去っていった。
「魔法使い……」

 魔法使いっていうのは、手のひらとか杖の先から、火やら水やらを出したりできる“魔法”という特別な能力を持つ人間のことだ。
 数は少ないし、私は見たことも会ったことも無いけど、実際にそういう人たちがいるらしいって話は、何度も耳にした。
 そういえば、魔法使いは魔女と同じような格好をしているとかなんとか、聞いたことがあるような……。
 じゃあ、さっき私を気絶させたのも、魔法ってことか。

 ……ホントにいるんだな、魔法使いって。

 魔女じゃなくて良かったと思う反面、ほんのちょっとだけ残念に感じる気持ちもある。
 ……やっぱり、魔女なんてただの伝説だ。いるわけないよね。


 その後、しばらく牢の中で退屈していると、女の子は本当に毛布と食事を持ってきた。

挿絵6-01

 渡された毛布はふかふかで温かく、食事は野菜や肉などがバランス良く入れられた温かいスープに、パンとミルクが付いていた。どうやら、本当に私を死なせるつもりは無いらしい。


 食事を摂る私を、女の子は立ったままじっと見つめている。……そんなに見られていると、なんだか居心地が悪い。
 よし。ちょっと話しかけてみよう。会話ができれば、いいんだけど。

「……ねえ。あなたの名前は?」
 スープを口に運びながら、何気ない感じで聞いてみた。
「ローザ」
 お、答えてくれたぞ。ドキドキしながら、もう一つ質問してみる。
「えっと、ローザはこの森で暮らしてるの?」
「うん」
 二回続けて、最低限の返答だ。でもいい。無視されるよりはよっぽどね。
「……あなたの家族も、ここにいるの?」
 この質問には、ぷいと顔を逸らすという反応を見せた。……聞いちゃまずいことだったかな。

 ……しっかし、ホントにこの森に住んでる人がいるなんてね。

「あ、そうだ」
 話題を変えようとして、あることを思い出す。
「さっきさぁ、何かが爆発したような音を聞いたんだけど、なんだかわかる?」
 あの音のおかげで、私は命の危機を脱することができた。森に住んでいるというこの子なら、何か知っているかもしれない。
「あれは、私の張った罠に魔物がかかった音だよ」
「え、そうなの?」
 驚いたけど、まあ、魔法使いだもんね。爆発する罠くらい簡単に作れるか。
「この家の周りには、ほかにもいろんな罠が仕掛けてあるの。魔物にだけ反応するように作った罠がね」
「へぇ〜」
 ローザは、ちょっと得意げな表情になっている。
「もちろん、人間用の罠もあるよ。家の近くに誰か来たら、わかるようになってるの」
「ふぅん……」
 きっと、私はその罠にかかったんだ。そうして、様子を見に来たローザと出会ったってとこかな。

 それと、もう一つ情報を得たぞ。この子、今「この家」って言ったよね。
 よし。思い切って確認してみよう。
「ここ、あなたの家なの?」
 すると、ローザは「うん」と頷いた。しかし、そうなると別の疑問が出てくる。
「どうして、家にこんな牢屋があるの?」
「悪い?」
 わずかに溶けかかっていた氷が、再び凍ってしまうような空気の変化を感じた。
「いや、別に悪くはないけど……」
「何かを聞き出そうとしているようだけど、無駄だよ」
 またわけのわからないことを言い出したぞ?
「何かって、何?」
「しらばっくれて……。あんた、この辺りを探りに来たんでしょ? 宝物を探してるって言ってたもんね」
 なんだ? ……もしかして、本当にここに何かあるのか?
 遠慮する必要は無い。聞き出してやる。
「あなたが何を言っているのかわかんないから聞くけど、ここに金とか宝石とかってあるの? 私は、そういうのがあるかもって聞いて、この森に来たんだけど」
 それを聞いたローザは、意外そうに「え?」と漏らす。その様子に、私は確信した。

挿絵6-02

 私はこの子に、何か誤解されているらしいってことを。

「そういえば、森で会った時、あんたには渡さないとか言ってたけど、何を? 金銀財宝以外興味無いんだけど、私」
 ここは強気でいこう。さっさと誤解を解いて、早くここを出たい。

「知らない」
「は?」
 ローザは私から視線を逸らし、「だから、知らないんだってば!」と声を荒らげた。
「何があるのか、私が確かめなきゃいけないの! 邪魔しないで!」
 そう言い放ち、駆け出すローザ。
「ちょっと!」
 呼び止めようと手を伸ばした時には、もう彼女の姿は見えなくなっていた。
「……なんなの、あれ」
 わけわからん。私は一体、何に巻き込まれてるんだ?

 大きな溜め息が出た。



■以下、作者コメント■

少し前に描いていた練習漫画のキャラクターも、魔法使いでした。
好きなものっていうのは、何回も描いちゃうんですね。
こういうファンタジー的存在だと、自分で好きなように設定を作れるのも良いところです。
きっとこれからも、魔法使い系のキャラクターを好んで描いていくことでしょう。

今回は、会話だけで終わってしまいました。先に言っておくと、次回も大体こんな感じです。
少しくらい省略した方がいいかなと思うこともありましたが、結局、欲に負けて書きたいように書くことにしました。

■ 2016/02/06 更新

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