なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part07



Part07



 ここに閉じ込められてから、どのくらい経ったのだろう。そんなことを考えながら、食事を終える。

 ローザは、結構こまめに食事を持ってきてくれる。たぶん、朝昼晩の三食ってことなんだろう。食事の内容は毎回ほぼ同じだけど、タダ飯だと思うと飽きずに美味しく感じるものだ。
 まあ、でも、さすがにこれがこれ以降もずっととなると、嫌気が差してくるのは間違いない。

 あの子は、私をいつまでここに閉じ込めておくつもりなのだろうか。
 どこかで何かをやっていることは間違いないんだけど、話しかけても無視されそうな雰囲気を醸し出しているので、聞くに聞けないでいる。

 ……そういえば、気になることがある。

 ここへ食事を運んでくるたびに、なんだかあの子、疲れていってる気がするんだよね。
 まさか、私の食事を作って疲れているわけじゃないだろうから、あの子がしてる“何か”が原因なんだろうなってことはわかるけど……。

「また……」
 もう何度も耳にした、爆発音。おそらく、ローザが魔物用に仕掛けた罠の音だろう。
 それは決まって、上の方から聞こえてくる。だから、ちゃんと確かめたわけじゃないけど、ここはローザの家の地下なんだろうなと予想できた。

 ……地下牢のある家。
 一体あの子は、何者なのだろうか。


 そして、また何度目かの食事の時間のことだった。
「あんた、それどうしたの?」
 さすがに看過できないものが、ローザの右手にあった。

 いつもなら、食事を牢屋に差し入れるのは彼女の右手。しかし、今回は左手。おかしいなと思って見たら、そこには包帯をぐるぐると巻いた右手が。
 しかも、よく見るとうっすらと血が滲んでいるではないか。

「あんたには関係ない」
 やっぱりというか、彼女の反応はそっけないものだった。だけど、そんなこと言われても気になるものは気になる。
「そりゃ関係ないかもだけど、ちょっとは教えてくれてもいいじゃない。……もしかしてそれ、魔物にやられたの?」
 するとローザは、眉を寄せ口を引き結び、私から視線を逸らした。
 この子やっぱり、結構顔に出るタイプだよな。

「あんたが何してんのかは知らないし興味もないけど、もしあんたが魔物にやられでもしたら、私ここで飢え死にすることになっちゃうでしょ? 関係ないって言うなら、私をここから出してからにしてよね」
 閉じ込められていた不満もあり、声は若干大きく、口調はややきつくなってしまった。

「って、ちょっと……」
 突然その場にへたり込んだと思ったら、彼女の目から涙が一筋、二筋……。

挿絵7-01

「え、……えっと、ごめん」
 反射的に謝ると、ローザは左手で涙を拭ってゆっくりと立ち上がった。
 そして、私に一瞥もくれずに、静かに歩き去っていった。

 ……私のせい、だよね?

 あの子にも何か事情があるというのはわかるけど、それが何か理解していたわけではない。それなのに、ちょっときつく言い過ぎたかな。

 ……次に彼女が来たら、もう一回謝ろう。


 食事を終えて少し経った頃、ローザはとぼとぼと牢屋へとやってきた。食器を下げようとする彼女に、すかさず声をかける。
「……あのさ、さっきはごめんね。私、自分のことしか考えてなかった」
 ローザはゆっくりと顔を上げ、その疲れた瞳で私を捉える。
 そして、牢の外へ引っ張り出したプレートから手を放した。
「私一人じゃ、無理みたいなの」
「え?」
 よくわからない呟き。ローザは、なぜか話しにくそうにしながらも、言葉を続ける。
「私一人じゃ、もう奥まで行けない。だから……」
 そこで、ひときわ言いづらそうにもじもじしてから、彼女は再び私と目を合わせた。

「……手伝って、ほしい」

 そして訪れる、沈黙の時間。
 手伝ってほしい? ……駄目だ、話が見えてこない。
「……えっと、よくわからないから、ちゃんと説明してくれる? 何を手伝ってほしいの?」
 できる限り静かに、そして優しく問いかけると、ローザは下に向けた視線をあっちこっちに動かしてから、口を開いた。


 ……ローザの説明をまとめるとこうだ。

 ローザには、幼い頃から世話をしてくれた魔法の師匠がいた。
 その師匠は半月ほど前に亡くなったそうだけど、亡くなる前にローザにあることを言い残していた。

 洞窟の一番奥に、きっとあなたの役に立つ物がある。私が死んだら取りに行きなさい、と。

 その洞窟というのは、この家の近くにあるらしい。
 そうしてローザは、暗く魔物の巣窟となっている洞窟を少しずつ明るくしながら進んでいたようだけど、とうとう怪我をしてしまった、ということのようだ。


 話し終える頃には、ローザの顔は涙と鼻水でぐしょぐしょになっていた。
 なるほどね。この子が私をここへ閉じ込めた理由が、ようやくわかったよ。

「……その洞窟の奥にある何かを私に取られたくなくて、こんなことしたんだね」
 私の言葉に、ローザは静かに小さく頷く。そして、か細い声で「ごめんなさい」と言った。
「で、その洞窟の奥へ行くのを手伝ってほしい、と」

 ……はっきり言って、そんなことをしてやる義理は無い。
 問答無用で牢屋にぶち込まれて、何日も閉じ込められていたんだからね。

 謝るというなら、そのことだけは許してやる。だけど、謝るから困っている自分を手伝えっていうのは、虫が良すぎるでしょ? ……とは言えなかった。

 心身共に弱り切っている彼女を、放っておけない。ただ純粋に、そう思った。そんな気持ちが湧いてきてしまったんだ。

 馬鹿だと思うよ、自分でもさ。


「……わかった。いいよ」
 溜め息一つ、そう答えていた。
「え?」
 ローザは、丸くした目で私を見つめる。相当驚いたようだ。
 わかるよ。変な奴だよな、私って。

「だから、一緒に洞窟に行ってあげるって言ってるの」
「いいの? だ、だって私、あんたにこんな酷いこと……」
「そうだね、酷いと思う。でも、もういいよ。謝ってくれたし」
「でも……」
 イラッとした私は、わざと大きな音を立てて鉄格子を掴む。

挿絵7-02

「だぁ〜! いいって言ってんだからいいんだよ! 手伝ってあげるから、さっさとここから出しなさいよ!」
 私の剣幕に、また目を丸くしていたローザは、再び泣きそうな顔になり、そして下を向いた。
 その左手が、ローブの裾をぎゅっと握る。

「ありがとう……!」



■以下、作者コメント■

書きたいことをそのまま書いた結果、今パートはこれまで以上に修正が必要になりました。
下手したら、次パートもほぼ牢屋で終わるところでした。
さすがに、それでは物語の進行が遅くなりすぎますからね。
何度か書き直して、ようやくまとまったって感じです。

それにしても、背景を描くのって難しいですね。
パースもそうですけど、私の場合、影を極力付けずに描いているので、余計に立体感が無いんですよね。
う〜ん、ホント難しい。

■ 2016/02/13 更新

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