なんか作って載せます

挿絵は「メディバンペイント Pro」という無料ソフトで描きました。

オリジナル短編小説 「トレジャーハンターガール」Part08



Part08



 ローザが手をかざすと、牢屋の扉がガチャリと開いた。どうやら、扉の鍵も魔法でかけられていたようだ。
 やれやれ。ようやく釈放か。


「あ、ちょっと待って」
「ん?」
 牢から出た私を呼び止めたローザは、こちらに手のひらを向けた。私は反射的に身構える。
 また魔法をかけるつもりか? と思ったら、その通りだった。一瞬の後に、首に違和感。
「なっ……!」
 恐る恐る触ってみると、首輪のような物がそこにあった。……取れない!

挿絵8-01

「ちょっと! これ、どういうつもり? なんなのこれ!」
 驚く私に、ローザは目を細める。
「保険だよ」
「はあ?」
「もし私を手伝わずに逃げたりしたら、それ、爆発させるから」
「ぅおい!」
 思わず、ローザの胸ぐらを掴む。なんだこいつ、マジでふざけんなよ?
「う」
 胸ぐらを掴まれたことには動じず、しかしローザは顔をしかめる。
「何、その顔」
「くさっ」
「はあ?」
「なんか、あんた臭いよ? 離れてくれない?」
 こいつ……。ぶっ飛ばしてやりたい衝動をどうにか抑え込み、胸ぐらから手を放す。
「……あのねぇ、街を出てから、もう何日も身体を洗ってないの。臭うに決まってるでしょ?」
 私から数歩後退したローザは、上を指差す。
「お風呂にお湯張ってあげるから、さっさと洗って。洞窟に行くのは、それからでいいから」
 誰のせいで臭くなったと思ってるんだ、と言いかけて、やめた。
 たぶんだけど、この子はこういう性格なんだ。いちいち腹を立ててたらキリがない。

 ……あ〜、でも、やっぱムカつくわ。


 ローザの案内で階段を上がり、久々に浴びる陽の光を楽しむ間も無く、短い廊下を通って浴室へ。

 魔法で浴槽にお湯を張ったローザ見ていたら、あることを思い出した。
「あんた、私のバッグ持ってるでしょ? 中に服の替えがあるから、持ってきてくれない?」
 身体をきれいにしても、服が汚れてたんじゃ意味ないからね。
「どうせ、中身全部出して調べたんでしょ?」
 ローザは悪気も無さそうに「うん」と頷いた。うん、じゃねぇよ。
「持ってきておいてあげるから、早く入りなよ。あ、脱いだ服はそっちのかごに入れておいて」
 脱衣所の隅にあるかごを指差すローザに、私は「はいはい」と答えながら上着を脱いだ。


 ……しっかし、随分古そうな家だな。上から下まで、汚れやらヒビ割れなんかが目立つ。
 今私が浸かっている浴槽も、丸い石造りでかなり古い感じだ。こんなの、街の宿でも見たことがない。
 そういえば、地下も結構汚かったし、さっき通ってきた廊下も同じ印象だったな。
 ローザ一人じゃ掃除が行き届かないのかもと思ったけど、彼女は魔法使い。魔法でどうとでもできそうなものだ。

 ……まあいいや。とにかく今は、身体の汚れを落とすことだけを考えよう。
 ゆっくりと、耳の下までお湯に浸かる。……あー、いい気持ち。


 身体をきれいにし、新しい服を着た私は、ローザにバッグと剣を返してもらって外に出てみた。

「おー……」
 家の外観も、思った通りのものだった。屋根も壁も薄汚れていて、ところどころ破損している。おそらく庭であろう家の前の広場は雑草だらけで、そこから家の壁に大量のツタが伸びていた。

挿絵8-02

 ここに建てられてから、一体どのくらいの年月が経っているのだろうか。見た目だけなら、確かに魔女の家と言われても仕方ない雰囲気だ。
 噂話は、半分くらい当たってたってことか。


「お待たせ」
 準備を終えて出てきたローザの左手には、先に赤色の石が埋め込まれた杖が握られていた。
「それ、もしかして魔法の杖ってやつ?」
 指差してみると、ローザは「まぁね」と言って小さく振って見せる。
「左手でも、魔法は出せるんでしょ? それは何のために使うの?」
「細かいコントロールは、利き手じゃないとまだ上手くできなくて。でも、杖があれば魔法の威力は落ちるけどコントロールは安定するの」
「へぇ〜」
 魔法使いと言っても、なんでもできるわけじゃないんだな。

「ところでさ、気になってることがあるんだけど」
 それは、牢屋に閉じ込められていた時からあった疑問だ。
「もしかして、あんたここで一人暮らししてるの?」
 軽くだけど、家の中は見て回った。だけど、ほかに誰かが暮らしている形跡は見当たらなかったんだ。
 そもそも、ほかに誰かいるなら、私に助けを求めたりはしなかったはずだし。

 すると、ローザは顔を少し下向けた。……聞いちゃまずいことだったかな。
「……先生がいなくなってからは、そうだよ」
 そう口にして、ローザは歩き出す。
「私には、ほかに家族はいないから」
 そう続けて、私の横を通り過ぎていくローザ。

 寂しげな背中を見ながら思った。この子のことを、もっと知りたいなって。



■以下、作者コメント■

今パートの内容は、もう少しダイジェスト的にまとめて短縮化を図れたかもと、後になって思いました。
でも、あまりまとめすぎても薄くなっちゃいますし、難しいところです。

話は変わりますが、入浴シーンを入れる時にいつも考えるのは、お湯に浸かる文化の有無ですね。
幸い、私が書くのはいつもファンタジー世界の物語なので、その辺は自由に決められます。
そして今回も、そういった文化がある世界観にしました。
理由は、まあ、なんとなくです。

それにしても、やっぱり家を描くのって難しいです。
一軒でこれだけ苦労している現状では、とても街並みなんて描けませんね。
少しずつでも技術を伸ばしていけるよう、頑張ります。

■ 2016/02/20 更新

← Part07 | Part09 →


inserted by FC2 system